ニュース 発掘:リドリー・スコットの幻の『ダーン』脚本

発掘:リドリー・スコットの幻の『ダーン』脚本

著者 : Joshua アップデート : Sep 24,2025

「『砂丘』の不出来な翻案など、簡単に作れてしまうだろう...」 –リドリー・スコット, サウスベンド・トリビューン紙, 1979

今週はデイヴィッド・リンチ版『砂丘』公開40周年を記念する。1984年12月14日公開当時4,000万ドルの興行失敗作だったが、この40年間で熱烈なファン層を獲得。デニ・ヴィルヌーヴによるフランク・ハーバートの名作小説の二部構成映画とは鮮烈なヴィジュアル的対照を見せている。風変わりなリンチは1981年5月、『ブレードランナー』と『グラディエーター』のリドリー・スコットが降板した直後、大物プロデューサー・ディノ・デ・ラウレンティスから公に『砂丘』監督に指名された。

リンチ参加以前、スコットがデ・ラウレンティスのため7-8ヶ月費やした翻案作業の詳細は長らく不明だったが、T.D. Nguyen氏の尽力により、ホウィートン大学コールマン・ラックコレクションから発掘された1980年10月稿のルディ・ウォリッツァー(『トゥー・レーン・ブラックトップ』『ウォーカー』)執筆133ページの草案が本記者のもとに届いた。

1979年『エイリアン』成功直後にスコットが参加した当時、原作者フランク・ハーバートは原作に忠実だが撮影不可能な二部構成の冗長な脚本を提出済みで(WiredInverseが既報)、スコットは7シーン程度の再利用価値を認めつつ、ハーラン・エリスン辞退後ロンドンでウォリッツァーに白紙からの全面改訂を依頼。パインウッド・スタジオで前期製作が始まる中、ハーバートや後のヴィルヌーフ同様に二部作の第一章として構成された。

「『砂丘』は私にとって最も困難な仕事だった」とウォリッツァーは1984年『Prevue Magazine』で語っている。「骨組み構築に最終稿以上の労力を要した。原作の核心は保ちつつ磨きをかけ、新たな視点を注入した」

「私は確固たる脚本を仕上げた」とスコットは2021年Total Filmで述べている。

スコット版『砂丘』頓挫の要因は、実弟フランクの死との関連やメキシコ撮影拒否(デ・ラウレンティスが主張)、予算5,000万ドル突破、そして新進監督にとって『ブレードランナー』が有望だったことなど多岐にわたるが、ユニバーサルピクチャーズ重役トム・マウントは本記者の著書『混乱の傑作─デイヴィッド・リンチの砂丘』で決定的要因を「ウォリッツァーの草案は社内総意を得られなかった」と明かしている。

ウォリッツァー案はハーバートの浩瀚な物語として映画化に耐えなかったのか?それとも暗鬱すぎて政治的過ぎたのか?専門家の分析を通じて独自の見解を深めてほしい。

現在87歳のウォリッツァーとスコット双方に取材を試みたが、ウォリッツァーは不参加、スコットは沈黙を守った。

暴烈なるパウロ像

1980年10月稿の『砂丘』は、灼熱の砂漠で青白い砂丘が銀河を焦がす無情な勢力へ変容するシュールな夢シークエンスから幕を開け、当初からパウロの不気味な運命を予兆する。鳥や虫が渦巻く「狂乱の螺旋」などの描写に、スコットならではの視覚的層厚が脈打つ。

砂漠が闇に沈むこの幻視は、カラダン城の雨窓から目覚めるパウロ・アトレーデスの夢だ。しかし彼はティモシー・シャラメ似の美青年ではなく、流れる金髪の7歳児で、 Reverend Motherの"箱"の試練に直面。恐れの祈りを唱える声とジェシカの囁き(母子の精神結合を暗示)が交錯する。リンチ版同様に焼け爛れた手が映るが、それは幻影だ。

試練を乗り越えた幼いパウロは城の別棟へ向かい、守衛に音声命令で短剣を奪い、眠るダンカン・アイダホを斬りかかって「真の戦士は眠らないのか」と試す。ここに荒削りな野生の純粋性が具現化されている。

「ウォリッツァーのパウロはより攻撃的だ」と『ハロドスキーの砂丘』ドキュメンタリー製作者スティーブン・スカルラタは指摘。「7歳から21歳への成長描写で、ダンカンをも凌ぐ訓練を見せる。だがジョの不安要素たっぷりの方がサスペンスを生む」

21歳のパウロは最強の剣士へ成長し、ダンカン(小説のガーニーを統合)は銀髪のジェイソン・モモア風のキャラクターに。

ダンカン
師たるもの 弟子に追い越される覚悟が必要だ
(微笑みつつ)
だが油断するな これは単なる一段階
更に危険な技法が待っている しかし今は
酔いを深めよう

皇帝の永続する統治

石庭の場面で、ジェシカが日中に架橋を渡る瞬間に重大な転換が起きる。『スペクトラル』の脚本家イアン・フリードは「庭師が『皇帝崩御』と叫ぶシーンは小説にないが、全事件の発火点として秀逸」とIGNに語った。

「雪峰に囲まれたマンダラ状の皇帝秘儀界」では二十四名家が弔問に集い、火葬台から昇る生命のきらめきが描かれる。盲目の預言者を介した先帝の託宣で、レトー公爵に砂漠惑星アラキス統治権が与えられる神秘的なシークエンスだ。

再生

バロン・ハルコンネン(フェイド・ラウサを通じて)は香辛料利権分割を提案し、拒絶される。「香辛料を制する者が宇宙を制す」という有名な台詞が、84年版同様にバロンから発せられる。

バロン
(ユエ師に)
立場を理解せよ 砂丘を制する者は香辛料を制し
香辛料を制する者は宇宙を制する
我なくして公爵の支配など無に等しい

「この強烈な句をリンチ作と長年思ってた」とDuneInfoのマーク・ベネットは驚く。

星々を越える旅

ギルド・ハイライナーによるアトレーデス家の出立シーンでは、原作『砂丘の救世主』まで登場しない航海士が描写される。香辛料変異体は「水かきのある手足を持つ伸長した人型」で、透明な殻内でトランス状態に入り、旋律で航路を指示。2012年『プロメテウス』のエンジニアを予感させる。

「航海士の可視化は見事」とフリードは舌を巻く。「ヴィルヌーヴ版で見られなかったのが惜しい」

アラキス到着後、アラキーン要塞の描写は1985年『レジェンド』を思わせる中世的雰囲気。ボス風の農民が宮殿で露を収穫するなど、剣と誓約を重んじる封建的世界観が濃厚だ。スコットが当時構想していたドラゴン登場の暗黒時代劇「トリスタン」との共通点もうかがえる。

気象観測所ではリエット・カインズが娘チャニを公爵親子に紹介。解剖標本が生態系保護を強調し、パウロたちのオーニソプター飛行では『ブレードランナー』的な廃墟都市景観が広がる。サンドワーム襲撃後、カインズ親子は砂漠を徒歩で進む選択をする。

シャダウト・メイプス(なぜか三つ乳)がジェシカにクリスナイフを献上する一方、窓外では水を乞う現地民の声が響く。アラキーンの路地は骨の山が累々と続く薄暗いスラムで、1966年『アルジェの戦い』を彷彿とさせる群衆描写が社会格差を浮き彫りにする。

再生

追加されたアクションシーンでは、パウロとダンカンがハルコンネン工作員を追ってバザールで80年代風酒場乱闘。ダンカンは斧をコナンのように投擲し、パウロは敵の喉元を正確に斬り伏せる。

ダンカンは斧を拾い

ダンカン
(斧を見て)
厄介な小道具だ
バランス悪いが仕方あるまい

手首のスナップで鉄棒を持った巨漢に投げつけ
斧は胸板を劈き 男を両断する

「バート・レイノルズ調の酒場殴り込みだ」とスカルラタ。「パウロの無敵性が早過ぎるのが難点。成長過程こそ彼の魅力なのに」

乱闘後、フレメン首長スティルガーが登場。密輸拠点で唯一のハルコンネン工作員を即座に斬首する。

一方、ベネ・ゲセリットのジェシカは1900年代初頭の奇術師のように空中浮遊し、その夜の受胎を決意。「貴殿の種は聖なる油が聖火に注がれる如し」と公爵に告げる。

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不毛の地の男爵

暗号化された虫型機器を検知したユエ師は悲痛なやり取りの後、パウロを街に解放する。パウロは浮浪児を追って禁断の香辛料ラウンジに入り、青い霧を吸入。幻視で未生妹アリアの「ムアドディブ」という声を聞く奇妙な体験をする。

裏切り者ユエは防御システムを無力化し、5人のハルコンネン精鋭刺客を侵入させる。悪夢のような炎上シーン後、羽根付き毒蛇型ハンターシーカー(原作の浮遊針とは異なる)に襲われるパウロ。

スコット草案の羽根付きハンターシーカーは、ハロドスキー版の「爆弾仕掛け飛行生物」コンセプトスケッチに類似。

「有機体化したハンターシーカーは秀逸」とスカルラタ。「ハロドスキー版同様、爆発物を仕込んだ生物という発想だ」

レトー公爵は複数刺客を斬首するが、ユエ師の投擲武器に倒れる。ダンカンは致命傷を負いつつユエを両断。英雄的行為なく、ジェシカが瀕死の公爵に毒ガスを仕込む。サルダウカー軍との戦いでダンカンは命を落とし、パウロたちの脱出を可能にする。ハルコンネン車両が20体の遺体を轢き潰す残酷描写。

大砂漠の論争

パウロとジェシカの砂漠逃避行は激烈だ。加速で歪む顔、翼損傷後の墜落、スティルテントでの嵐凌ぎ。ヴィルヌーヴ版同様、パウロは巨大サンドワームに直 confront する。

本稿で削除された要素に、パウロとジェシカの近親相姦によるアリア誕生という過激な設定があった。ハーバートとデ・ラウレンティスの激怒で削除を命じられた。

「禁断の愛物語にしたがった!」ハーバートは1982年サクラメント・ビー紙で激怒。「ファンの反応を想像してみろ」

ウォリッツァーはPrevue誌で「エディプス的引力を強化した。英雄の通過儀礼としてタブー破壊を配置したかった」と釈明。

現在の草案では砂丘で転がり合う程度だが、太古の洞